管理会計と財務会計の違いは?経理担当者向けに解説します
企業の会計処理には、大きく分けて2つの種類があります。
【財務会計】と、今回のテーマとなる【管理会計】です。
会計の分野において、一般的によく知られているのは【財務会計】の分野かもしれません。
会計の仕事について詳しく知らない人でもイメージしやすく、株主・経営者にとって重要な分野であるため、投資家も含めて大手企業の財務諸表に関するニュースをチェックしている人は多いはずです。
しかし、その財務会計と同様に重要なのが、会社の未来を見通すための【管理会計】です。
この記事では、管理会計と財務会計の違いについて、それぞれの特徴に触れながら解説します。
・管理会計は、社内の将来を管理する目的で行う。財務会計は、社外に過去の実績を報告する目的で行う
・管理会計を任されると経営陣からの信頼も得られ、キャリアアップにつながる
管理会計とは
管理会計について、その概要を人間の身体で例えると「会社の血液検査」です。
会社の健康状態は今どのような状況なのか、これからどうしていくべきなのかを検討する、言わば「会社内部の管理」を行うための会計と考えると分かりやすいでしょう。
社内の各部署から上がってくるデータを基に、経理部が会計資料の形に落とし込んでいきます。
直接費(売上原価など)・間接費(水道光熱費など)といった原価分析、何で儲けているのかの収益分析を踏まえ、現状の把握や今後の経営判断に役立てるための会計です。
財務会計とは
財務会計では、利害関係者に向けて報告する資料を作成します。
人間で言えば、就職活動時に提出する「健康診断書」のような役割を担います。
貸借対照表・損益計算書といった、その年の成績をまとめた資料を作成し、株主などに経営に関する情報を伝えることが役割です。
その中身を見て、投資家・株主は、今後もこの会社に出資するか・株を保有し続けるか検討することになります。
資料の提出に関しては、各社共通のフォーマットを用います。
これは、管理会計と違い、会社それぞれで計算方法が異なると、利益の配分方法・割合・税金計算などが不公平になってしまうおそれがあるからです。
会社の経営状況に問題がないものと認められれば、会社の収益から恩恵を受けられるものと判断し、今後も投資活動が続けられるものと見込まれます。
対外的に成績を報告することが、財務会計に求められている役割と言えるでしょう。
管理会計の2つの管理
管理会計の基本は、まずは予算管理です。
ビジネスはとかく「とにかく作って、売ったらこれだけ利益がでた」と、過去の数字を追いかけがちです。 しかし、予算管理を行うことで、目標と計画を立て、それを実績と比較する未来志向の経営が可能となります。
予算は単年度、あるいは3年単位など中期経営計画に応じた年数で策定します。 他の収入の柱の構築も重要
事業部門ごとに、売上、原価、経費、および利益のそれぞれについての策定が必要となってきます。
商品が複数ある場合には、商品ごとの予算も策定します。
経費については、固定費と変動費をしっかり区別することも経営分析のためには重要です。
管理会計と財務会計の違い
管理会計と財務会計の違いについて簡単にまとめると、社内の将来を管理する目的で行うのか、社外に過去の実績を報告する目的で行うのかという違いがあります。
財務会計において必要とする財務諸表は、さながら辞書・写真のように一つの時代を反映したものであり、その時間は各年度で止まっています。
成績を過去として作成しなければ、税金の金額・配当金などがいつまでたっても計算できず、企業経営に支障をきたします。
よって、その年に会社に出資してくれた人に対し貢献度に応じた配当金を支払うため、稼いだ分を税金として納めるために、財務会計が存在します。
一方、管理会計は会社の将来を管理するために行われます。
原価計算・月次決算などの概念があるのは、毎月の成績から今後の企業活動をどう進めていくのかを判別するためです。
広告宣伝費が例年に比べて膨大になっていたとしたら、それは経営者の想定したことなのか。
消耗品費が昨年・昨月より不自然な上昇をしていた場合、誰が何を購入したのかを担当者は把握しているのか。
原価率が年々高くなっている部門があるなら、原価を下げる努力はしているのか。
こういったことを逐一確認し、会社をあるべき姿に押し上げていくのが、管理会計に求められています。
管理会計を導入するメリット
管理会計を「制度」として、明確に経理の現場に導入する場合、業績が管理しやすい・コスト削減の提案ができる・経営戦略がうちやすい、などのメリットが挙げられます。
決算の時期だけで判断すると、比較的期間が長いため、各月で何があったのかを把握するのは難しい傾向にあります。
しかし、月次決算の仕組みを取り入れるだけで、毎月ごとの成績が判明し、今後に向けた課題も立てやすくなるでしょう。
経営者としては、例えば長期売掛金などを月ごとに追いかけて進捗を把握できるため、業績の管理に対して細かい指示を出しやすくなります。
原価が上がっている部門があれば、現地を視察して現状を確認するという方法も取れるはずです。
将来に向けた取り組みを素早く行えるのが、管理会計のメリットなのです。
管理会計がキャリアアップに繋がる理由とは
では、なぜ管理会計がキャリアアップに繋がるのか。
管理会計とは会社独自のルールを駆使し、事業分析を行うことが出来ます。
会社にとってメインとなる事業の業績分析が可能となれば、あなた自身も経営状況を把握することが出来るようになり、また役員などに正確な情報・資料を提出する立場となり、信用を得られるきっかけとなります。
重要な内容をサポートすることも出てくるでしょう。
責任は大きくなりますが、周囲との連携及びコミュニケーションをしっかりと取ることで、信頼も得られるようになり、あなた自身のやりがいや達成感に繋がる部分もあることでしょう。
経理に求められる管理会計の能力
管理会計は「Management accounting」の日本語訳で、managementを「管理」と訳しているわけですが、「経営」と訳されることも多くあります。
つまり、管理会計は「経営会計」と訳したほうが実情に合っているともいえ、経営判断のために行われます。
管理会計を行うことにより、以下のような経営判断が可能となります。
・伸ばす事業と撤退する事業の区分
・投資対効果の把握
・既存事業の未来予測
・新規の事業・企画を継続するかの判断
・競合他社と比較した自社の状況判断
原価計算の知識
管理会計を行う経理は、原価計算の知識も求められます。
「どの製品に一番コストがかかったのか」といった情報は、経営分析や組織運営を行ううえで欠かすことができないからです。
原価計算はやや高度であるため、簿記2級以上で初めて出題されます。
財務会計の知識
管理会計におすすめの資格
管理会計検定
管理会計検定は、日本管理会計教育協会(JEIMA)が実施する、日本で唯一の管理会計に特化した資格です。
2級と1級があり、1級に合格すると「認定管理会計士」試験の受験資格が得られます。
認定管理会計士の資格を取得すれば“管理会計の専門家”とみなされるでしょう。
日商簿記検定では、2級から原価計算の基礎が出題されます。
1級を取得すれば、「原価計算をマスターした」といえるでしょう。
簿記2級以上は、経理であればぜひ取得したいところです。
ビジネス会計検定試験
税理士試験科目 財務諸表論
税理士試験の財務諸表論も、管理会計を行う経理におすすめの資格です。
財務諸表論は簿記で行う会計処理の理論的背景となるため、簿記と並行して学ぶと会計への理解がより深まります。
簿記2級取得者で300~400時間程度の勉強時間が必要とされる難関ですが、合格すればその合格は一生有効となるため、チャレンジしてみるのも良いでしょう。
管理会計は、会社の今と将来を運営するためのツールです。
これに対して、財務会計は会社の過去を切り取るためのツールです。
どちらも、健全に会社を運営していくためには必要なことですが、会社を「経営する」視点から見て必要性が高いのは、会社の細部を見通す管理会計です。
家計においても、家計簿をつけるとムダ・ムラが見えてくるように、管理会計においても詳細を確認することで将来に向けた対策を練ることができます。
シンクタンクとコンサルティングファームの違い
シンクタンクとは、政治・経済・社会といった諸分野に関する政策立案・提言を行う公共の研究機関です。
シンクタンクの始まりは、「社会改良運動」を目指して1884年にイギリスで設立されたフェビアン協会、1910年のアメリカ最古のシンクタンクカーネギー協会(カーネギー基金の前身)、「米国型リベラル思想」に基づき1916年に設立されたブルッキングズ研究所などであるとされています。
シンクタンクにも政府系シンクタンクと民間シンクタンクの2種類があり、さらに母体とする領域によってもさらに細分化されます。
2.シンクタンクとコンサルティングファームの役割の違い
シンクタンク
政治・経済・社会などに関する各分野の専門家が集まり、さまざまな調査や研究を行います。また研究結果もとに国や地方自治体の政策に対する提言も行います。
コンサルティングファーム
クライアントとなる企業の経営をサポートするのが一番の役割となります。その企業の目標設定やそこに向けた戦略策定、課題解決に至るまで多方面からサポートします。
クライアントの担当部門の違い
コンサルティングテーマの違い
求められるスキルの違い
3.国内におけるシンクタンク
政府系シンクタンク
民間シンクタンク
金融機関系
(例)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
日本総合研究所
みずほ総合研究所
証券会社系
(例)
野村総合研究所
大和総研
保険会社系
(例)
損保ジャパン総合研究所
第一生命経済研究所
企業系
(例)
三菱総合研究所
NTTデータ経営研究所
4.シンクタンクとコンサルティングファームのビジネスモデル
シンクタンクのビジネスモデル
コンサルティングファームのビジネスモデル
5.シンクタンクがコンサルティングを行うようになった経緯
その後も1度シンクタンク設立ブームが訪れますが(1980年代後半)、1990年代はじめのバブル崩壊により、シンクタンクはこれまでよりも経営の安定化を必要とされます。1度は官公庁への依存度が高まったシンクタンクでしたが、経営の安定化という目的を果たすべく始まったのが、民間シンクタンクを中心とした「シンクタンクのコンサルティング」という流れになります。代表的なものは野村総合研究所等です。
6.シンクタンク系コンサルティングファームの特徴は?
7.シンクタンクとコンサルティングファームの働き方の違い
キャリア・働き方
扱うテーマ・得られる経験
8.シンクタンクとコンサルティングファームの年収の違い
9.シンクタンクとコンサルティングファームの評価・採用制度の違い
10.シンクタンクに向いている方
シンクタンクに向いている方とはどのような方でしょうか。これまでのご説明にもあるように、シンクタンクではリサーチが主な業務内容になります。そのため以下のような人が向いていると考えられます。
・専門性の高い方
・同領域で長く働かれたい方
11.まとめ
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B 元外資総合ファーム マネジャー
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E 元外資戦略ファーム コンサルタント
営農指導に関する事業の紹介
JA全中では、全国各地において優れた産地振興や技術普及に取り組んだ営農指導業務を担当する職員を表彰し、その取り組みを広く紹介することによって、各JAでの取り組みの共有化による営農指導員の相互研鑽とネットワークの構築をはかることを目的に、標記のJA営農指導実践全国大会を平成28年度より開催しています。
6回目となる令和3年度については、次の通り開催しました。
日 時:令和4年2月18日(金)11時~17時00分
場 所:web会議システムによるライブ配信
参加者:約320名
受賞内容 | 所属・氏名 (【 】はブロック名) | タイトルおよび要旨 | 動画 |
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受賞内容 | 所属・氏名 (【 】はブロック名) | タイトルおよび要旨 | 動画 |
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受賞内容 | 所属・氏名 (【 】はブロック名) | タイトルおよび要旨 | 動画 |
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受賞内容 | 所属・氏名 (【 】はブロック名) | タイトルおよび要旨 | 動画 |
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農業経営管理支援
JAの営農指導事業は、かつては農業技術指導や生産部会の運営、行政との連絡調整が主な業務でしたが、担い手農家、
集落営農法人等の経営規模の拡大・高度化に対応していくためには、営農技術指導に加えて、農業経営を支援する税務、会計、
法人化等の経営支援が必要です。
そのため、多くのJAが農業経営管理支援(農業経営コンサルティング)の取り組みを進めています。
第208回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説
今、我が国は、オミクロン株の感染急拡大に直面しています。
まず、新型コロナに感染し、苦しんでおられる方々にお見舞いを申し上げます。
また、長期にわたり、新型コロナとの闘いに御協力いただいている国民の皆さんに、心から感謝申し上げます。
そして、新型コロナ対応の最前線におられる、自治体、医療機関、介護施設、検疫所、保健所などのエッセンシャルワーカーの皆さんに、深く、感謝申し上げます。
岸田政権の最優先課題は、新型コロナ対応です。しかし、政府だけで対応できるものではありません。
国民皆で助け合い、この状況を乗り越えていきたいと思います。引き続き、皆さんの御協力を、お願いいたします。
(コロナ後の新しい日本を創り上げるための挑戦)
内閣総理大臣に就任してから、国内外の山積する課題に、スピード感を持って、決断を下し、対応してきました。
「行蔵(こうぞう)は我に存す。」 他の収入の柱の構築も重要
それぞれの決断の責任は、自分が全て負う覚悟で取り組んでまいりました。
その際、皆さんの声に丁寧に耳を澄まし、状況が変化する中で、国民にとってより良い方策になるよう、粘り強く対応し、判断の背景をしっかり説明する努力をしてきました。
このように、「信頼と共感」の政治姿勢を堅持しつつ、まずは、新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んでまいります。
新型コロナという困難に直面しているからこそ、立ちすくむのではなく、皆で協力しながら、挑戦し、コロナ後の新しい日本を創り上げていこうではありませんか。
二 新型コロナ対応
(新型コロナ対応の基本的な考え方)
オミクロン株による感染が拡大しています。
国民の皆さんの、またか、いい加減にしてくれ、もう限界だという声を、私自身、聞いてきました。しかし、新型コロナという見えない敵は、想定以上に手強いことを、改めて認識しなければなりません。
昨年、我が国は、ワクチン接種など、国民一丸となった取組により、デルタ株を何とか抑え込むことができました。そこに、すかさず、変異株が現れました。ウイルスの怖さを改めて感じます。
ただし、新しい変異株の可能性は、専門家からも指摘されてきました。
私自身、総理に就任した時から、デルタ株を超える強力な変異株が現れる、そうした最悪の事態を想定して、万全の体制を整えるべく、政府を挙げて、取り組んできました。
先般の補正予算では、医療体制の拡充、ワクチン接種の推進や経口薬の確保、さらには、仕事や暮らしを守り抜くための支援策を盛り込んでいます。
もちろん、新型コロナには未知のことも多く、全てを見通した上で判断を行える訳ではありません。
私としては、専門家の意見を伺いながら、過度に恐れることなく、最新の知見に基づく対応を、冷静に進める覚悟です。
また、一度決めた方針でも、より良い方法があるのであれば、躊躇なく改め、柔軟に対応を進化させていく所存です。
国民の皆さん、今一度、御協力いただき、共に、この国難を乗り越えていこうではありませんか。
具体的な対応について申し上げます。
(オミクロン株への対応)
これまで政府は、G7で最も厳しい水準の水際対策により、海外からのオミクロン株流入を最小限に抑えてきました。
この対策により、三回目のワクチン接種の開始、無料検査の拡充、経口薬の確保、医療提供体制の充実など、国内感染の増加に備える時間を確保できました。
当面の対応として、二月末まで、水際対策の骨格を維持します。
その上で、今後は、国内対策に重点を置きます。少しずつ明らかになってきたオミクロン株の特性を踏まえ、メリハリをつけた対策を講じていきます。
専門家から、オミクロン株について、感染力が高い一方、感染者の多くは軽症・無症状であり、重症化率は低い可能性が高い、高齢者等で急速に感染が拡がると、重症者が発生する割合が高くなるおそれがある、といった分析が報告されました。
こうした報告も踏まえ、重症者や中等症の患者、あるいは、そのリスクが高い方々に、的確に医療を提供することに主眼を置いて、医療提供体制を強化します。
私から各自治体に、自己点検を依頼し、医療提供体制の確保に万全を期すよう要請しました。
即応病床数の確保は順調に進んでいます。
また、今後重要となる在宅・宿泊療養に対応する地域の医療機関を、全国一・六万、「全体像」の計画を更に三割上回る体制を準備できました。
陽性と判断されれば、直ちに健康観察や訪問診療を実施するとともに、必要な方へのパルスオキシメーターの迅速なお届け、経口薬へのアクセスの確保を徹底します。
稼働状況の「見える化」を強化し、これらをしっかりと動かしていきます。
その上で、感染が想定を超えて急拡大し、重症者の絶対数の増加が生じた時に、病床がひっ迫するような緊急事態に陥ることは、何としても避けなければなりません。
この観点から、先進諸国の取組を参考にしながら、入退院基準などについて、科学的知見の集約を急ぎ、対応を検討します。
予防・検査・早期治療の強化も重要です。
ワクチンについては、医療関係者、高齢者三千百万人を対象とする三回目接種の前倒しについて、ペースアップさせます。
三月以降は、追加確保した一千八百万人分のワクチンを活用し、高齢者の接種を六か月間隔で行うとともに、五千五百万人の一般向け接種も、少なくとも七か月、余力のある自治体では六か月で接種を行います。
国としても、自衛隊による大規模接種会場を設置し、自治体の取組を後押しします。
感染拡大が懸念される地域において、予約なしでの無料検査を拡充します。
メルク社の経口薬百六十万人分について、既に全国二万二千の医療機関・薬局が登録し、医療現場に、三万人分をお届けしています。
作用の仕組みが異なるファイザー社の経口薬についても、月内に二百万人分の購入に最終合意し、来月できるだけ早くの実用化を目指します。
オミクロン株は、お子さんの感染も多く見られます。これまでワクチンの接種対象ではなかった十二歳未満の子どもについても、希望者ができるだけ早く、ワクチン接種を受けられるよう、手続を進めます。
保健所について、体制の強化、科学的根拠に基づく業務の合理化、保健所に頼らない地域の重層的ネットワークの整備を進め、必要な即応体制を確保します。
感染を抑えるためだけでなく、BCP計画遂行、社会活動維持のために、テレワークを積極的に活用していただくようお願いいたします。
学校においても、休校時のオンライン授業の準備を進めます。入試については、追試などにより受験機会を確保するとともに、四月以降の入学を可とするなど、柔軟な対応を要請します。
米国は、必要不可欠な場合以外の外出を認めない、夜間の外出を禁止するなど、在日米軍の感染拡大防止措置を発表しました。在日米軍の駐留に関わる保健・衛生上の課題に関し、地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論していきます。
(息の長い感染症対応体制強化)
三 新しい資本主義
(新しい資本主義の実現)
経済再生の要は、「新しい資本主義」の実現です。
市場に依存し過ぎたことで、公平な分配が行われず生じた、格差や貧困の拡大。市場や競争の効率性を重視し過ぎたことによる、中長期的投資の不足、そして持続可能性の喪失。行き過ぎた集中によって生じた、都市と地方の格差。自然に負荷をかけ過ぎたことによって深刻化した、気候変動問題。分厚い中間層の衰退がもたらした、健全な民主主義の危機。
世界でこうした問題への危機感が高まっていることを背景に、市場に任せれば全てが上手くいくという、新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの「経済社会変革」の動きが始まっています。
私は、成長と分配の好循環による「新しい資本主義」によって、この世界の動きを主導していきます。官と民が全体像を共有し、協働することで、国民一人ひとりが豊かで、生き生きと暮らせる社会を作っていきます。
日本ならばできる、日本だからできる。共に、この「経済社会変革」に挑戦していこうではありませんか。
様々な弊害を是正する仕組みを、「成長戦略」と「分配戦略」の両面から、資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化していきます。
成長戦略では、「デジタル」、「気候変動」、「経済安全保障」、「科学技術・イノベーション」などの社会課題の解決を図るとともに、これまで、日本の弱みとされてきた分野に、官民の投資を集め、成長のエンジンへと転換していきます。
分配や格差の問題にも正面から向き合い、次の成長につなげます。こうして、成長と分配の両面から経済を動かし、好循環を生み出すことで、持続可能な経済を作り上げます。
(デジタル田園都市国家構想)
まずは成長戦略。第一の柱はデジタルを活用した地方の活性化です。
新しい資本主義の主役は地方です。デジタル田園都市国家構想を強力に推進し、地域の課題解決とともに、地方から全国へと、ボトムアップでの成長を実現していきます。
そのために、インフラ整備、規制・制度見直し、デジタルサービスの実装を、一体的に動かしていきます。
高齢化や過疎化などに直面する地方においてこそ、オンライン診療、GIGAスクール、スマート農林水産業などのデジタルサービスを活用できるよう、5G、データセンター、光ファイバーなどのインフラの整備計画を取りまとめます。
5G基地局を信号機に併設するなど多様な手法で民間投資を促し、自動運転や、ダイナミックな交通管制、ドローンなど、未来のサービスを支えるインフラを整備します。
デジタルサービスの実装に向けて、規制・制度の見直しを進めます。
単なる規制緩和ではなく、新しいルールを作ることで、地域社会に新たなサービスを生み出し、日々の暮らしを豊かにすることを目指します。
例えば、「運転者なし」の自動運転車、低速・小型の自動配送ロボットが公道を走る場合のルールや、ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールを、新たに定めることで、安全を確保しながら、新サービス展開の道を拓きます。
例えば、企業版ふるさと納税のルールを明確化することで、企業の支援による、地方のサテライトオフィス整備の取組を後押しし、企業や個人の都市から地方への流れを加速させます。
マイナンバーカードは、デジタル社会の安全安心のための「パスポート」であり、その利便性を改善させます。
例えば、二〇二四年度までに、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を進めます。転居時、住所変更手続を市役所で行えば、警察署での手続を不要とします。
リアルとネットが密接不可分となる中、サイバー攻撃等への対処体制を整備するとともに、企業のセキュリティ強化に取り組み、デジタル社会のリスクに対し、正面から向き合います。
(経済安全保障)
経済安全保障も、待ったなしの課題であり、新しい資本主義の重要な柱です。
新たな法律により、サプライチェーン強靱化への支援、電力、通信、金融などの基幹インフラにおける重要機器・システムの事前安全性審査制度、安全保障上機微な発明の特許非公開制度等を整備します。
あわせて、半導体製造工場の設備投資や、AI、量子、バイオ、ライフサイエンス、光通信、宇宙、海洋といった分野に対する官民の研究開発投資を後押ししていきます。
(科学技術・イノベーション)
社会課題を成長のエンジンへと押し上げていくためには、科学技術・イノベーションの力が不可欠です。
世界と伍する研究大学を作るため、研究力に加え、研究と経営の分離、若手研究者の登用など、先端的なガバナンスを導入する大学に対し、十兆円の大学ファンドで支援します。 他の収入の柱の構築も重要
官民のイノベーション人材育成を強化するため、大学の学部再編や文系理系の枠を超えた人材育成の取組を加速します。
本年をスタートアップ創出元年とし、五か年計画を設定して、大規模なスタートアップの創出に取り組み、戦後の創業期に次ぐ、日本の「第二創業期」を実現します。
二〇二五年には、大阪・関西万博が開催されます。科学技術や、イノベーションの力で、未来を切り拓いていく日本の姿を世界に発信していきます。
成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現する要となるのが、分配戦略です。
その第一は、所得の向上につながる「賃上げ」です。
先日、車座でお話を伺った中小製造事業の社長さんは、生産性向上を図り、従業員の可処分所得を三%引き上げたい、それが経営者としての信念だ、と力強く語ってくれました。
成長の果実を、従業員に分配する。そして、未来への投資である賃上げが原動力となって、更なる成長につながる。こうした好循環を作ります。
賃上げ税制の拡充、公的価格の引き上げに加え、中小企業が原材料費の高騰で苦しむ中、適正な価格転嫁を行えるよう、環境整備を進めます。
春には、春闘があります。近年、賃上げ率の低下傾向が続いていますが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待します。
できる限り早期に、全国加重平均千円以上となるよう、最低賃金の見直しにも取り組んでいきます。
(人への投資)
第二に、「人への投資」の抜本強化です。
資本主義は多くの資本で成り立っていますが、モノからコトへと進む時代、付加価値の源泉は、創意工夫や、新しいアイデアを生み出す「人的資本」、「人」です。
しかし、我が国の人への投資は、他国に比して大きく後塵を拝しています。
今後、官民の人への投資を、早期に、少なくとも倍増し、さらにその上を目指していくことで、企業の持続的価値創造と、賃上げを両立させていきます。
スキル向上、再教育の充実、副業の活用といった人的投資の充実が、デジタル社会、炭素中立社会への変革を円滑に進めるための鍵です。
世界が、産業界が、地域が必要とする、人材像やスキルについて、現場の声を丁寧に聞き、明確化した上で、海外の先進事例からも学び、公的職業訓練の在り方をゼロベースで見直します。
人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解を作っていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定します。
あわせて、四半期開示の見直しを行います。
(中間層の維持)
第三に、未来を担う次世代の「中間層の維持」です。
子育て・若者世代に焦点を当て、世帯所得の引き上げに向けて、取り組みます。
全世代型社会保障構築会議において、男女が希望通り働ける社会づくりや、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支え合う、持続的な社会保障制度の構築に向け、議論を進めます。
世帯所得の向上を考えるとき、男女の賃金格差も大きなテーマです。
この問題の是正に向け、企業の開示ルールを見直します。
新たな官民連携を進めるにあたっては、公共施設の運営を民間に任せるコンセッションの一層の活用、ベンチャー・フィランソロフィーによるNPOや社会的企業への支援、社会的インパクト投資など、民による公的機能の補完も重要な論点です。
今春、新しい資本主義のグランドデザインと、実行計画を取りまとめます。
来年、日本がG7議長国を務めることを見据え、ダボス会議や、G7の場を活用し、世界の首脳や、経済界のリーダーと問題意識を共有しながら、世界の議論を牽引し、資本主義の変革に向けた大きな流れを作っていきます。
四 気候変動問題への対応
過度の効率性重視による市場の失敗、持続可能性の欠如、富める国と富まざる国の環境格差など、資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題であり、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題でもあります。
二〇二〇年、衆参両院において、党派を超えた賛成を得て、気候非常事態宣言決議が可決されました。皆さん、子や孫の世代のためにも、共にこの困難な課題に取り組もうではありませんか。
同時に、この分野は、世界が注目する成長分野でもあります。二〇五〇年カーボンニュートラル実現には、世界全体で、年間一兆ドルの投資を、二〇三〇年までに四兆ドルに増やすことが必要との試算があります。
我が国においても、官民が、炭素中立型の経済社会に向けた変革の全体像を共有し、この分野への投資を早急に、少なくとも倍増させ、脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていきます。
二〇三〇年度四十六%削減、二〇五〇年カーボンニュートラルの目標実現に向け、単に、エネルギー供給構造の変革だけでなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる、経済社会全体の大変革に取り組みます。
どの様な分野で、いつまでに、どういう仕掛けで、どれくらいの投資を引き出すのか。経済社会変革の道筋を、クリーンエネルギー戦略として取りまとめ、お示しします。
送配電インフラ、蓄電池、再エネはじめ水素・アンモニア、革新原子力、核融合など非炭素電源。需要側や、地域における脱炭素化、ライフスタイルの転換。資金調達の在り方。カーボンプライシング。多くの論点に方向性を見出していきます。
もう一つ重要なことは、我が国が、水素やアンモニアなど日本の技術、制度、ノウハウを活かし、世界、特にアジアの脱炭素化に貢献し、技術標準や国際的なインフラ整備をアジア各国と共に主導していくことです。
いわば、「アジア・ゼロエミッション共同体」と呼びうるものを、アジア有志国と力を合わせて作ることを目指します。
地域包括ケアシステムとは? 構成要素や役割、今後の課題など
今後、認知症高齢者や単身高齢世帯等の増加に伴い、医療や介護サービス以外にも、在宅生活を継続するための日常的な生活支援(配食・見守り等)を必要とする方の増加が見込まれます。
そのためには、行政サービスのみならず、NPO、ボランティア、民間企業等の多様な事業主体による重層的な支援体制を構築することが求められますが、同時に、高齢者の社会参加をより一層推進することを通じて、元気な高齢者が生活支援の担い手として活躍するなど、高齢者が社会的役割をもつことで、生きがいや介護予防にもつなげる取組が重要です。
(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」)
介護予防サービスについても、前述の介護サービス同様に、管轄主体が都道府県と市町村で分かれています。都道府県の管轄下が 「介護予防サービス」 、市町村の管轄下が 「地域密着型介護予防サービス」 です。
(1)介護予防サービス
訪問サービス
・介護予防訪問介護(ホームヘルプ)
・介護予防訪問看護
・介護予防訪問リハビリテーション
など
通所サービス
・介護予防通所介護(デイサービス)
・介護予防通所リハビリテーション
短期入所サービス
・介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)
・介護予防短期入所療養介護
(2)地域密着型介護予防サービス
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・介護予防認知症対応型共同生活介護 (グループホーム)
6.地域包括ケアシステムを支える多職種の連携
この実現のために、厚生労働省は多職種の専門職が連携・協働できる 「地域ケア会議」 の取り組みを推進しています。地域ケア会議は、おもに地域包括支援センターが主催し、自治体職員や包括職員、ケアマネジャーや介護事業者、作業療法士などのリハビリ職、医師や看護師をはじめとした医療従事者など、さまざまな関係者が参加します。
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