オンライントレード

フェアトレードについて学ぶ

フェアトレードについて学ぶ

WWB/ジャパン 起業セミナーの様子 設立から20年以上たった現在は、対象を女性に限定せず
起業応援セミナーやイベント、すでに事業を行っている方向けのサポート事業を開催。過去には生産者パートナーのもとへ起業家が草木染の技術指導に向かったり、起業家と共に途上国の伝統食材を生かした商品の協働開発、フェアトレード商品を活用した協働プロジェクトなど、WWB/ジャパンや起業家と繋がりお互いに生かしあいながら、コミュニティトレードを推し進めています。

フェアトレードについて学ぶ

今回は、国際基督教大学(ICU)在学時代に約2ヶ月間FLJでインターンとして活動、University of East Anglia, MA Globalisation, Business and Sustainable Developmentに進学し修士号を取得したのち、現在 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 Social Impact Officeにてコンサルタントとして活躍されている丹波小桃さんにお話を伺いました。

インタビュアー

  • 写真提供:丹波小桃さん:フェアトレード認証のコットンを使用した「ICU ELABEL」のコットンバック

―丹波さんのインターンとしての活動は目を見張るものであったと伺いましたが、まずはFLJでのインターンシップに興味を持った経緯をお聞かせください。

丹波さん(以下、敬称略): フェアトレードについて初めて知ったのは中学生の頃でした。ミッション系の中高一貫校に通っていたので毎朝礼拝があり、先生のお話の中で、世界には自分と同じ子どもなのに働かなくてはいけない子たちがいるという現状を知りました。そしてフェアトレードは、このような児童労働を解決するための手段の一つとして紹介されていました。この時からフェアトレードは「何となく社会に良いもの」と漠然としたイメージを思っていました。高校生になると、国際協力に携わる仕事に憧れるようになりました。そんな中、マザーハウス代表の山口絵理子さんの自伝を読んだことをきっかけに、途上国にいって学校を建てたり、井戸を作ったりすることも重要だけど、お金や物資を渡すだけの支援ではなく、根本的なグローバルビジネスの流れそのものを変えることが格差の是正には重要なんだと考えるようになりました。大学に入って国際開発学を中心に学びましたが、人道支援や開発政策に関わることにはなんだかイメージがわかず、やはりビジネスを通して何かやりたいと強く感じていました。そこで、資本主義経済に対するオルタナティブなビジネスの仕組みのひとつとして「フェアトレード」を理解しようと思ったのが、FLJでインターンをしようと思ったきっかけです。フェアトレードの仕組みを深く理解できたら、自身の「国際協力のあり方」に対するもやもやが解消されるのではないかと思っていたのかもしれません。今から振り返るとそんな感じだったかなと思うのですが. 当時はそこまで深く考えてなかったと思います(笑)。

―丹波さんのインターンとしての活動は目を見張るものであったと伺いましたが、まずはFLJでのインターンシップに興味を持った経緯をお聞かせください。

丹波さん(以下、敬称略): フェアトレードについて初めて知ったのは中学生の頃でした。ミッション系の中高一貫校に通っていたので毎朝礼拝があり、先生のお話の中で、世界には自分と同じ子どもなのに働かなくてはいけない子たちがいるという現状を知りました。そしてフェアトレードは、このような児童労働を解決するための手段の一つとして紹介されていました。この時からフェアトレードは「何となく社会に良いもの」と漠然としたイメージを思っていました。高校生になると、国際協力に携わる仕事に憧れるようになりました。そんな中、マザーハウス代表の山口絵理子さんの自伝を読んだことをきっかけに、途上国にいって学校を建てたり、井戸を作ったりすることも重要だけど、お金や物資を渡すだけの支援ではなく、根本的なグローバルビジネスの流れそのものを変えることが格差の是正には重要なんだと考えるようになりました。大学に入って国際開発学を中心に学びましたが、人道支援や開発政策に関わることにはなんだかイメージがわかず、やはりビジネスを通して何かやりたいと強く感じていました。そこで、資本主義経済に対するオルタナティブなビジネスの仕組みのひとつとして「フェアトレード」を理解しようと思ったのが、FLJでインターンをしようと思ったきっかけです。フェアトレードの仕組みを深く理解できたら、自身の「国際協力のあり方」に対するもやもやが解消されるのではないかと思っていたのかもしれません。今から振り返るとそんな感じだったかなと思うのですが. 当時はそこまで深く考えてなかったと思います(笑)。

―では、そのようなきっかけで始めたインターンでは主にどのような活動をなさったのですか。

  • 写真提供:株式会社フェアトレードコットンイニシアティブ:丹波 さんが「これを見たときは本当に感動した」と話すインドの縫製工場での写真。

―コットンバックの製作に至るまでのことを詳しくお聞かせください。

丹波:私の大学では、大学のオリジナルグッズは同窓会という卒業生が運営する組織で製品の企画・開発を行っており、コットンバックの企画もこの組織に持ちこんでプレゼンをしました。しかし、当初は熱意こそあったものの、サンプルの開発費用もなければ、デザインや販路の確保も未定であり、案を採用してもらうことはできませんでした。
ひとりでできることの限界にぶち当たった瞬間ではありましたが、あきらめきれず、仲のいい友達に声をかけ、当時、学生の夢を応援すべく卒業生によるファンディングで開催されていた「ドリーム・コンペティション」というコンペに参加しました。そこで金賞と賞金をいただきフェアトレードコットンの製品開発資金を調達しました。具体的に製品企画を行うために、デザインやファッションのタレントを持つ友達に加わってもらい、「ICU フェアトレードについて学ぶ ELABEL」(*3) フェアトレードについて学ぶ フェアトレードについて学ぶ という団体を立ち上げ、トートバッグとブックカバーの開発を行いました。ここまで話すと、頑張ったね、と声をかけていただくことが多いのですが、私自身は全然頑張ってなくて(笑)、本当に才能を持った多様な友達に恵まれ、一気にプロジェクトが加速していきました。フェアトレードのメッセージとICUのロゴが融合した素敵なデザインもメンバーが考えてくれたものでしたし、ICU ELABELの団体ロゴも後輩が作ってくれました。メンバーはもともと、フェアトレードに特別な関心を持っていたというわけではないのですが、だからこそ製品開発を通して、共にフェアトレードの意義を見つめ直し、多様な意見や視点を取り込むことができました。みんなで議論に議論を重ね、インドの工場から製品の写真を送ってもらった時には本当に感動して、「たくさんの人に手に取ってもらいたい」と心の底から思いましたね。私が卒業した後も後輩が引き継いでくれ、今でも学内の売店に置いてもらっています。

―コットンバックの製作に至るまでのことを詳しくお聞かせください。

丹波:私の大学では、大学のオリジナルグッズは同窓会という卒業生が運営する組織で製品の企画・開発を行っており、コットンバックの企画もこの組織に持ちこんでプレゼンをしました。しかし、当初は熱意こそあったものの、サンプルの開発費用もなければ、デザインや販路の確保も未定であり、案を採用してもらうことはできませんでした。
ひとりでできることの限界にぶち当たった瞬間ではありましたが、あきらめきれず、仲のいい友達に声をかけ、当時、学生の夢を応援すべく卒業生によるファンディングで開催されていた「ドリーム・コンペティション」というコンペに参加しました。そこで金賞と賞金をいただきフェアトレードコットンの製品開発資金を調達しました。具体的に製品企画を行うために、デザインやファッションのタレントを持つ友達に加わってもらい、「ICU ELABEL」(*3) という団体を立ち上げ、トートバッグとブックカバーの開発を行いました。ここまで話すと、頑張ったね、と声をかけていただくことが多いのですが、私自身は全然頑張ってなくて(笑)、本当に才能を持った多様な友達に恵まれ、一気にプロジェクトが加速していきました。フェアトレードのメッセージとICUのロゴが融合した素敵なデザインもメンバーが考えてくれたものでしたし、ICU ELABELの団体ロゴも後輩が作ってくれました。メンバーはもともと、フェアトレードに特別な関心を持っていたというわけではないのですが、だからこそ製品開発を通して、共にフェアトレードの意義を見つめ直し、多様な意見や視点を取り込むことができました。みんなで議論に議論を重ね、インドの工場から製品の写真を送ってもらった時には本当に感動して、「たくさんの人に手に取ってもらいたい」と心の底から思いましたね。私が卒業した後も後輩が引き継いでくれ、今でも学内の売店に置いてもらっています。

(*1) 日本で最も幅広い種類のフェアトレード認証製品を開発・販売している国際協力NGO。
1993年に日本で初めてのフェアトレード認証ラベル製品を販売した団体でもある。
https://www.wakachiai.com/

―フェアトレードの中でも生地や繊維への関心が高まったのには何かきっかけがあったのでしょうか。

―それがのちにエシカルファッションに関する団体でのインターンにつながったのですね。

  • 写真提供:丹波小桃さん 現在もICUで販売している「ICU ELABEL」のコットンバックとブックカバー

―今後さらにフェアトレードを普及していくにはどのようなことが不可欠だとお考えですか。

  • 写真提供:丹波小桃さん 現在もICUで
    販売している「ICU ELABEL」
    のコットンバックとブックカバー

―今後さらにフェアトレードを普及していくにはどのようなことが不可欠だとお考えですか。

―最後に、フェアトレードの普及も含め熱心に活動を続けるためのモチベーションの秘訣をお聞かせください。

インタビューを終えて

インターン 岡村: 精力的に活動されている丹波さんの考えていることを覗き見ることができた気がして、大変貴重な経験になりました。一人一人が居心地のいい世界を目指すことで、いつか地球全体が誰にとっても居心地のいい場所になるのだと改めて痛感しました。フェアトレードを選ぶことはその大きな第一歩になるかもしれません。丹波さん、お忙しい中本当にありがとうございました!

フェアトレードについて学ぶ

2018 年度斎藤ゼミ U16 活動報告書

名:演習 フェアトレードについて学ぶ I, II フェアトレードについて学ぶ

担当者:斎藤 彦教授

2018年度において、斎藤ゼミの U1 6生である私達は、国際協力についての学びを深める中で、特にフェアトレードに焦点を当てて様々な学習や活動を行ってきました。その中で、 2 年次までに養ってきた、倫理や歴史といった領域からの考察力を活かし、また、伸ばしながら、様々な課外活動を行いました。さらに、それらの課外活動に加え、国際協力の分野だけでなく経済や歴史についての文献や資料を活用 したり 、討論を行うことで、知識を深めてきました。以下は、 2018 年斎藤ゼミ U16 ⽣ の活動や学習内容をまとめた活動報告書です。

演習 I における活動内容

演習Ⅰにおいては、実際に国際協力における問題点を見つめ直したうえで、ビジネスが持つ力に焦点当てて活動を行いました。その中でも特に私達が注目し、考察を深めたビジネスがフェアトレードです。フェアトレードについて学びを深めていく際に、実際に様々なフェアトレードのイベントに参加 したり 、フェアトレードを行っている企業を訪れ、直接自らの目で現場を見て、お話をうかがいました。

具体的な活動内容としては、4月には垂井町で行われたフェアトレードイベントへ、5月には関西食べる通信 EXPO 、6月にはフェアトレードを行っている企業の一つである、シサム工房に足を運びました。垂井町で行われたフェアトレードイベントでは、フェアトレードに携わっていらっしゃる方々の思いを知り、フェアトレードが抱える難しさを初めて目の当たりにしました。そして、関西食べる通信 EXPO では、生産者と消費者の関係性について改めて考えさせられました。普段、国際協力や貧困、フェアトレードと言うと、どうしても国外のことにばかり注目してしまっていましたが、国内で起こっている食に関する問題についても、知り、考え、見つめ直す事ができ、自分たちの責任や行動についても考えるきっかけになりました。また、シサム工房では、実際にフェアトレードを行っている企業が、どのように生産者の方々や消費者にアプローチしており、フェアトレードを促進するためにどのような戦略を行っているのかを知ることができ、新たな刺激を受けました。そして、6月には、斎藤ゼミの卒業生の方で、 フェアトレードについて学ぶ NGO やフェアトレードに携わっていらっしゃる方々に、お話を伺う機会もありました。身近な人からお話を伺うことで、今の私達にできることや、私達の将来について考える機会になりました。演習Ⅰにおける学びを通して、私達の身近に存在する問題に目を向けることの大切さを学び、夏休みには、京都府左京区に位置する久多という過疎地域を訪れ、食や自然がいかに私達にとって大切なものなのかを、肌で感じ、考えることができました。

これらの活動に加え、国際協力について学ぶ上で必要な、経済や Human Development に関する資料や文献も読み、ゼミのメンバーとも話し合うことで、新たな知識を学び、その知識を深める活動も行いました。

演習 II における活動内容

具合的な活動としては、 11 月には龍谷大学の学園祭においてフェアトレードの はちみつを 使ったレモネードの模擬店を出店し、 12 月の半ばには、よりフェアトレードについて考え、知識を深めるために、立命館大学の学生の方々との交流会を行いました。また、 12 月の末にはフェアトレードタウンである台北を訪れ、台北がフェアトレードタウンとして認証されるまでの経緯についてのお話を うかがったり 、フェアトレードを行っている様々なお店にも伺わせていただきました。学園祭における模擬店の出店にあたり、フェアトレード商品を扱うからこその費用面での難しさや、お客様へのアポローチ方法に悩まされることが多々ありました。しかし、演習Ⅰにおいて様々なイベントや企業を訪問し、経営者の方々に教えていただいた、フェアトレードの意義や難しさを、より身近に、また実際に自分たちの問題として考えるための、とても貴重な機会となりました。そして立命館大学の学生の方々との交流会においては、今まで考えたことのなかったような視点から、フェアトレードに対する意見や現状について知り、討論することができ、とても良い刺激を受けました。そして、台北訪問では、フェアトレードを促進するためには、どのような要素が必要で、私達は何をしなければならないのか、ということを、実際にフェアトレードタウンとして認証された台北の成功例から学ぶ機会となりました。

これらの活動に加え、演習Ⅰに引き続き、国際協力について学ぶ上で大事な、歴史に関する文献や、 Human Development に関する資料を読み、知識を深め、自分たちの国際協力に関する考えを深めました。

また 2 月現在の活動としては、 3 月に控えている You challengers 発表と卒業論文に取り組んでいます。

上記で記述しているように、演習Ⅰでは主に、国際協力について考える際の1つの着眼点として、フェアトレードというソーシャルビジネスに関する知識や考えを深め、さらに、フェアトレードを通して国際協力について考察をしました。そして、演習Ⅱにおいては、演習Ⅰで学んだことを、ただお話を聞き考えるだけで終わらせるのではなく、私達なりに、学園祭の模擬店という形で、実際にフェアトレードと関わってみたり、他大学の学生と交流会をしたり、台北に足を運びお話を聞くことで、新たな刺激を受け、さらに自分たちの考えを深めました。今後も、より多くの知識を身につけ、討論や様々な活動を通して考えを深め、卒業論文に向けてゼミ活動を行っていく予定です。以上で 2018 年 度斎藤ゼミ U16 ⽣ の活動報告を終わります。

西川 , ( 2014 )『新・世界経済入門』岩波新書

Selim. J, (2016), “ Human Development Report 2016 ” , フェアトレードについて学ぶ UNDP.

木畑( 2014 )『 20 世紀の歴史』岩波新書

Séverine. D, (2009), “ An Introduction to the Human Development and Capability Approach ” , Earthscan.

フェアトレードの第3世界ショップ お店・事業を始めたい方へ

アサンテサーナロゴ.png

フェアトレードのお店に興味のある方へ起業セミナー

WWB/ジャパン 起業セミナーの様子 当時、事業計画の作り方を体系的に学ぶ場は見当たりませんでした。そこで、第3世界ショップでの活動をすでに行っていた私たちは、

をスタートさせることにしました。
WWB/ジャパンはWomen's World Banking(女性が経済活動をする際に直面する法・資金・教育面での問題解決を目指して発足。世界各国に支部があり、各支部ごとに独立したサービス・事業を展開しています)の日本支部として発足し、これまで6000人以上の卒業生がいて、全国に1000人以上の起業家を輩出してきました。

フェアトレードのお店に興味のある方へ起業セミナー


WWB/ジャパン 起業セミナーの様子 設立から20年以上たった現在は、対象を女性に限定せず
起業応援セミナーやイベント、すでに事業を行っている方向けのサポート事業を開催。過去には生産者パートナーのもとへ起業家が草木染の技術指導に向かったり、起業家と共に途上国の伝統食材を生かした商品の協働開発、フェアトレード商品を活用した協働プロジェクトなど、WWB/ジャパンや起業家と繋がりお互いに生かしあいながら、コミュニティトレードを推し進めています。

フィールドで学ぶ、生活者の経済としてのフェアトレードとは?――箕曲在弘さんインタビュー(後編) フィールドで学ぶ、生活者の経済としてのフェアトレードとは?――箕曲在弘さんインタビュー(後編)

今日の「教えてください。」は、人類学者の 箕曲 みのお 在弘さんのインタビュー後編です。(前編はこちら)
箕曲さんは、ラオスの農村をフィールドにして長年フェアトレードの研究をされ、今年3月には「フィールド教育」という新しい大学教育のあり方を提案する『人類学者たちのフィールド教育――自己変容に向けた学びのデザイン』(ナカニシヤ出版)という本も発表されています。 フェアトレードについて学ぶ
生活者としての実感が漂白されない言葉によって、遠い場所と自分とのつながりや、「オルタナティブな経済」と呼ばれるものを考えることができるだろうか、という素朴な疑問が浮かんだとき、私がぜひ取材してみたいと思ったのが箕曲さんでした。
後編では「フィールド教育」の話を中心にお届けします。フェアトレードの現場に赴くことは、大学教育にどんな可能性をもたらすのでしょうか?

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(左:『人類学者たちのフィールド教育』ナカニシヤ出版、2021年、右:『フェアトレードの人類学』めこん、2014年)

これからの「つながり」の創造に向けて

箕曲 あるエピソードをお話ししますね。先ほど、私は以前日本のフェアトレード団体の手伝いをしていたと言いました。この団体はフェアトレードに近い「民衆交易」と呼ばれる活動をしてきました。これは国際的な産消連携のようなもので、製品の買取をするだけではなく、生産者のところへ行って課題を話し合いながら、ともに売り買いの関係を作っていく試みです。
1989年に生まれたこの団体はもともと、フィリピンで砂糖の価格暴落によって飢餓が起きたときに、現地の砂糖やバナナを買いつけて日本の生協に卸しはじめました。生協との関係が強い会社なんです。創業者は、1960年代に学生運動をやっていた方でした。学生運動の経験者のなかには、地域に根ざした形で生協運動を始めた人たちがいます。そのネットワークがこの団体の流通ルートに強く影響したんです。彼らにとって「連帯」は重要なキーワードでした。以前、創業者の堀田正彦さんと対談したとき、彼は「無条件連帯」という言葉を使っていました。学生運動を経験した人には、同族的な仲間同士の連帯という感覚が理解できるために、生協との連携はうまくいったようです。
一方、欧米流ではフェアトレードという概念が、日本の「民衆交易」団体の設立とほぼ同じ時期に生まれました。しかし、両者の進む道はかなり異なりました。欧米では認証制度が確立し、これはルールや原則を作ってそこに乗ってこれるのならば誰でも参加できるという仕組みになります。
仲間同士の無条件連帯の弱みは、世代交代が難しいという点です。すでにほとんどの人が引退していくなかで、同じ経験を共有していない人たちには連帯意識が引き継がれない。堀田さん自身もこの点は理解されていて、やはり欧米流のルール作りによって継承していくしかないとおっしゃっていました。
また、これは世代間の継承だけでなく、遠い空間を隔てた場所に住む生産者との連帯とも関係してくるように思います。同族的な無条件連帯って、やはり生産者との共有も難しいですよね。運動性を出せば出すほど、それを共有できる人は限定されます。連帯意識にもとづく取引は特定の時間や空間に制約されるものですから、世代や距離を超えて続けていくためには、今の欧米のフェアトレードのような仕組みを作るしかない部分があります。

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(スタディツアーにおけるコーヒー農家訪問。 ※以下、写真はすべて箕曲さん提供 )

箕曲 どちらも補完しあう関係が望ましいのだろうと思います。フェアトレードや有機栽培の認証制度のように、属人的な部分をなくして買取や組織運営のルールを決めていけば持続性はある。けれども、そのルールが地域固有の問題の解決に本当に寄与するのか、わからない部分もあります。
一方で、私は「連帯」という言葉がもつ、一種の重苦しさに少し抵抗感はあります。「交流」とか「つながり」くらいのほうがいいような気がします。「連帯」って、みんなが「グローバル資本主義」のような抽象的な敵に向かって戦っているというイメージがあるけれども、その「グローバル資本主義」なるものがいったい何なのか、それぞれ思い描いているものが違う可能性がありますよね。
ここでいう「交流」や「つながり」は、それぞれ生きる環境の異なる者同士が、同じ場を共有し、対話しあう中で共通する問題意識を発見したり、共通はしていないけれどお互いができることを持ち寄って、新たな試みを始めてみたりするきっかけを意味しています。
アナ・チンという人類学者が「スケーラビリティ(規格不変性)」と「ノンスケーラビリティ(規格不能性)」という相互に関連しあう対概念を提起しています。前者は同じ枠組みのまま拡張可能なものを指します。もとは情報技術の世界で使われていた言葉ですが、チンはこれを資本主義的世界の特徴を示すために応用しています。コンビニのフランチャイズはその典型ですよね。みな同じ規格で全国展開していきます。一方、「ノンスケーラビリティ」は規模の拡大がそもそもできないようなものを指しています。「交流」や「つながり」、そしてそこから生まれてくる何らかの試みは、ノンスケーラブルなものです。
先ほど連帯は世代間継承が難しいと言いましたが、一時的に存在していた連帯が消滅してしまったなら、また別の人たちが別の形で新たな連帯を築いていけばいいのだと思います。しかし、残念ながら、いまはノンスケーラブルなものを排除していこうとする動きが強いので、新たな連帯やつながりが生まれにくくなっているのではないかと思います。だからこそ、ノンスケーラブルなものに価値をおくようにしたいものです。

学生の「安定志向」を揺さぶるには

箕曲 ふたつの理由があります。ひとつは、さきほども言ったように、フェアトレードをふわふわした言葉で捉えたまま普及活動をする学生がけっこういて、それはまずいと思ったからです。実際に生産者のところへ行き、彼らが作ったものを自分たちで製品化して売れば、それまでのイメージとは全然ちがうところに気づくはずだと考えました。
もうひとつは、学生たちがとても「安定志向」であることに驚いたからです。公務員とか銀行の一般職といった職業にできるだけ早く就くことが「安定」である、とうイメージを鵜呑みにしている感じでした。親から「安定したところに行きなさい」と言われつづけてきているし、留年も許されません。経済状況が上向きではないので安定志向になることはある程度理解できます。でも、それが本人にとって最善の選択なのかということはあまり考えられていない。そういう大学生が一定数そばにいて、本当にこれでいいのかということが、私が教員になって初めて考えたことだったんです。そのときに、彼らがフィールドに行って何を見つけてくるのかを知りたいと思いました。
そして、やっぱりうまく流れを作ることができると、「フェアトレードは生産者の生活に貢献している」「途上国の農村の人々は貧しい」といった一面的な思い込みが、よい意味でどんどん崩れていく経験を得られるんです。例えば、学生は日本のフェアトレード団体にコーヒーを売却している農協の組合員の家庭を数軒訪問して、インタビュー調査をすることで、家ごとに農地面積や子どもの数、車など持っている資産が異なるので、フェアトレードのスキームに適合的な農家とそうでない農家がいることを理解します。農家ごとに生計維持に対する考え方が違うんです。2019年に渡航した学生たちは、現地で得た知識を多くの人に知ってもらいたいと思い、コーヒー農家の実際の生活の姿を疑似体験できるボードゲームを制作することにしました。学生たちは現地の農家との交流をきっかけに、何かできることはないかと動機づけられて、創造的な活動に踏み出しました。それは結果的に、学生たちの人生の選択や見え方を変えていくことになると気づきました。フィールドに行ってガツンとした違和感をもつことが、今の大学教育において重要だとわかってきたんです。

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(スタディツアーにおける村の生産集団長への聞き取り。奥の右側が箕曲さん)

「わからない」ということが評価される経験を

箕曲 多くの学生が、なんらかの評価を内面化して、そこに自分を合わせていかないとまずいと感じていると思うんです。一度、評価軸から自由になる経験をしたほうがいいと私は思っています。
この本は「自己変容型フィールド学習」をテーマにしていますが、「こういう方向に変容すべき」という決まりは一切ありません。ただ、それでも学生は教員に求められていることを感じとって、安易なかたちで「自分は変わりました」という方向にもっていこうとしてしまう。本当はそこからも自由になってほしいのですが。なかなか難しくて、これからもやり方を改良していかないといけないと思っています。

箕曲 私も、まさにそれがポイントだと思っています。フィールドに行って、「わからない」という状態にどうやってもっていくか。現地にいるあいだ、学生には毎日感じたことを話してもらうのですが、なかにはうまく言葉にならなくて長時間黙ってしまう人もいます。ここで、変にテンプレート化された語りではなく、むしろ言葉に詰まるということが大切なんだとこちらが言っておかないと、学生はなかなか気づいてくれないんです。
それまでの教育では、わからないことについて考え続けるということをあまりやってきていないはずなんです。「わからない」ということが評価される経験がなかった。フィールドでは、それぞれが抱える「わからなさ」が出てきたところで、それを考えてみよう、という方向にもっていきます。

いま、大学教育の現場でできること

箕曲 私自身も自己変容の結果としてこういう立場をとっているんです。「もう大学なんて」と諦めて、自分が大事だと思うことを試みなかったり、あるいは大学の外でやったりするという動きはあります。でも、今の大学の仕組みのなかでもやろうと思えばやれることはあるなと最近実感しています。
これは、やっぱりそれなりに大変なんです。時間を使うし、けっこうなモチベーションが必要で。でも、今の私が一番接する相手は、ラオスの人たちよりもむしろ大学生です。だから、彼らと向き合うなかで心ここにあらず、というのはまずいと思うんですよ。「本当は別のことがやりたいんだけど・・・」というふうに思いながら仕事するのは、やっている本人としても辛いです。

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(現地の農協幹部との打ち合わせ)

フィールドで学ぶ、生活者の経済としてのフェアトレードとは?――箕曲在弘さんインタビュー(前編) フィールドで学ぶ、生活者の経済としてのフェアトレードとは?――箕曲在弘さんインタビュー(前編)

こんにちは。新人の角です。ミシマ社メンバーが本気で会いたい人に会ってお話を伺う企画「教えてください。」が、今回久しぶりの復活となります。
新人の私がお会いしたいと望んだのは、人類学者の 箕曲 ( フェアトレードについて学ぶ みのお ) 在弘さん。箕曲さんは、ラオスの農村をフィールドにして長年フェアトレードの研究をされ、今年3月には「フィールド教育」という新しい大学教育のあり方を提案する『人類学者たちのフィールド教育――自己変容に向けた学びのデザイン』(ナカニシヤ出版)という本も発表されています。
私は学生時代に少しだけ人類学を勉強し、この春からは、言葉にたずさわる出版の仕事を学びはじめました。生活者としての実感が漂白されない言葉によって、遠い場所と自分とのつながりや、「オルタナティブな経済」と呼ばれるものを考えることができるだろうか、という素朴な疑問が浮かんだとき、ぜひ取材してみたいと思ったのが箕曲さんでした。
フェアとは何か? 「連帯」という言葉をどう捉えるか? 「わからない」を評価する教育の意義とは? インタビューの内容を、2日間にわたってお届けします。

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(左:『人類学者たちのフィールド教育』ナカニシヤ出版、2021年、右:『フェアトレードの人類学』めこん、2014年)

フェアトレードを生活の全体像のなかで考えたかった

箕曲 私は、大学生のときに短期ではじめてラオスに行って、そのときの印象がすごく良かったんです。ラオスは社会主義国家であるため長期調査がしづらいのですが、幸運にも指導教員を通して調査許可を取ることができました。ほとんど長期で入れないような場所に行けるとしたら良い経験だと思い、フィールドにすることにしました。
ラオスは水稲耕作が盛んで、メコン川沿いにのどかな田園風景が広がっています。あるきっかけから、そんなラオスでもコーヒーを作っていることを知りました。そこからコーヒーについて勉強するうちに、「フェアトレード」という言葉を見つけたんです。2006年頃のことです。当時の日本ではフェアトレードという言葉をほとんど聞きませんでしたが、市場経済のネガティブな影響を是正していく運動だと知って、おもしろいと思いました。 (*フェアトレードとは、グローバルな資本主義や新自由主義と呼ばれる経済システムによって、発展途上国の小規模生産者や労働者が不利益を被る事態を問題視し、より公正な貿易を目指す運動です。)
私は、グローバルな制度とローカルな人びとの生活とのつながりを研究したいと考えていました。コーヒーはグローバルな市場で取引される一次産品の代表格ですから、「コーヒー生産者」という切り口はすごくピンときたんです。そして、フェアトレードに巻き込まれていくことが現地の生産者にとってどういう経験なのかということに興味を持ちました。

箕曲 フェアトレードを調べていると、こんなのうまくいくのかな? と疑問が湧くんです。全世界統一の最低保証価格を決めましょうとか、民主的な組織を作りましょうといったことは、一見当たり前のようですが、いかにも先進国的な価値だなとも思える。これがラオスの農村で通用するのかな、と。そこで、現地でちゃんと調査するということを研究の柱にしました。
人類学なので、人びとの生活全体をどう見るかという視点が大切になります。現地に住んだ上で家計調査をして、お金や資源の出入りを一軒一軒調べていったら、生産者の生活の全体像の中にフェアトレードを位置づけられるかなと。

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(フィールドとなったコーヒー農園。※以下、写真はすべて箕曲さん提供)

ふわふわした言葉のままで普及活動しない

箕曲 日本には「産消連携」、つまり農村の生産者と都会の消費者が直接やりとりをする、いわゆる生協に代表されるような運動が根付いています。そこと、外から入ってきたフェアトレード運動はうまく重なってきませんでした。
日常生活でコーヒーを飲んでいても、その背後の関係において何がフェアであり、何がフェアでないか、ということは実感しがたいと思います。ピンとこないですよね。

箕曲 そうですね。私はフェアトレードコーヒーを販売する学生団体を作って活動しているのですが、学生たちに接すると、フェアトレードを、現地の人を助けてあげるというような上から目線の行為だと解釈をしている人がけっこういます。「フェア」という言葉にネガティブな印象をもつ傾向が強くて、あまり使いたくないと。その一方で、「なんかいいことをやってるんだな」というぼんやりした感覚をもつ人も多いです。いずれも「なんとなく」で済んでしまっていて、突き詰めて考える対象ではないということですね。 フェアトレードについて学ぶ
ふわふわした言葉のままでフェアトレードの普及活動をするのは、地に足のついていない、空回りの自転車を漕ぐようなものです。現地に行って農家さんに接すると、それまでのイメージは大きく変わっていきます。

箕曲 欧米では、日本よりも圧倒的にたくさんのフェアトレード商品が売られています。以前イギリスに行ったとき、スーパーマーケットのコーヒーの棚がすべてフェアトレード製品、ということもよくありました。すると、消費者は、目の前の製品がフェアトレード製品であるかどうかをわざわざ意識しなくなるんですよ。
この状況について、フェアトレードが普及しても消費者の意識の変化が起こるわけではないという批判がよく出ます。だけど、私はその批判には無理があると思っていて。多くの消費者が生産者を意識しながら生きるとか、「連帯する」とかは、ちょっと無茶なことだろうと考えています。
私は、積極的に活動をする人たちのほうがちゃんと生産者と対話できるようになればいいと思っています。具体化・血肉化されていない言葉をもって行動すると、自分たちの生活をよりよくしたいと本気で考える生産者とのあいだにズレが生じるので。

「おいしさ」と「公正な取引」は別問題?

箕曲 安全・安心マークにせよフェアトレードにせよ、記号があることが製品を選ばせるということは、いまの社会では当たり前になっています。私たちの生活では、生産者と消費者はかなり分断されていて、流通ルートを自分の眼で確認することはできないので、ある程度はどうしようもない。記号がなかったら、それはそれで困っちゃうわけですよね。
でも、その問題意識はわかります。コーヒーも「スペシャルティコーヒー」と呼ばれるものは味や風味が点数化されて、点数が高いものに高価がつけられます。数値とか記号のほうに選択の基準があって、製品そのものを実感にもとづいて買うことがなくなっている部分はあると思います。

箕曲 そこはですね、フェアトレードの製品とはいっても、「おいしくないと売れない」ということは明らかです。最終的には、みんな「頭で買っている」わけではないので。「生産者のためになっている」というメッセージが購買意欲を駆り立てるのはかなり限定的な状況なんです。「生産者のためになっているから買おう」となっても、その製品がその人にとって美味しくなかったり、高すぎたりしたら、くりかえし購入することはありません。
しかし、売れるものを作るということになってしまうと、それに対応できない生産者はフェアトレードのスキームから脱落していくという事態が起こります。さっきの話とおなじで、ここにもジレンマが出てくるんですね。

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(コーヒーチェリーの収穫)

箕曲 高い技術レベルに合わせられるのは設備投資ができる人であって、変な言い方ですが、現地においてはそこそこ豊かな人。市場で選別されて残るのは、そういう人になってしまいます。
以前、日本のフェアトレード団体と一緒にラオスの農協の支援をしていたのですが、その時も高い技術レベルに合わせられない組合員がいました。もともとコーヒーの一次加工までを農家が担うことで付加価値をつけて高い報酬を支払うことにしていたのですが、さまざまな事情で加工できない組合員は、加工する余裕のある組合員にコーヒーチェリー(加工前の果実)を託して代わりに加工してもらうという形になりました。その分、コーヒーチェリーを託した組合員は、得られる報酬が少なくなってしまいます。
フェアトレードコーヒーは、実が完熟か、発酵の時間がどれくらいか、欠陥豆を除去できているかなど、品質が厳格にチェックされるので、手入れに時間がかかります。生産者はそういうことをすべてやってはいられません。だから彼らは、フェアトレード団体との取引とそうじゃない取引をそれぞれの家庭の事情に合わせて選んでいるのです。フェアトレード団体に全部売ってくださいと求められたら、彼らは困ってしまいます。

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